1月30日(木)

七時起床。九時始業ながら七時四十五分集合なのを内心ひどく馬鹿馬鹿しく思いながらも急いで支度。西船橋まで。自分より年下に見える眉毛の繋がった地味目の女性と合流すると八時前に赤い送迎バスに乗り、配送センターへ。ユニクロ衣類のピッキング作業。朝礼にやたら気合いが入っていたので、いやな予感がしたが、やはり社員が威高にふるまう嫌な現場だった。命令口調なのは当たり前として、なにかミスでも犯すと年配層や女性にも関わらず平気で怒鳴り散らす。それも一度「おれはそんな事言わなかったよな。なのに何でそうした? おれに納得するように説明してみろ」と何を言ったところで言い訳にしか聞こえなくさせるようなひどく嫌味な言い方で追い詰めてから声を張り上げる。酷い時には全員の作業を一時停止させ、集合を掛けた挙句「この人はこのようなミスをしたので皆さんは気をつけてください」と20人くらいの前で見せしめにする。自分は直接大した注意を受けなかったが、今朝会った若い女の子が泣きながら作業してるのを見てさすがに胸糞悪くなった。昼食休憩時に、きりが良いところまでやろうと少しエリアに残っていると、社員と古参のアルバイトが集まって今日の派遣の何番がああだこうだと笑いながら陰口を叩いているのが聞こえた。ここでは派遣は名前ではなく番号で呼ばれる。
昼、日清のシーフードヌードルと菓子パン喰う。浅羽通明の『昭和三十年代主義』読む。『アナーキズム』『野望としての教養』『澁澤龍彦の時代』など他の著作と比べると論考が甘く、どうも歯切れが悪い。
昼休憩明けに集合が掛かり、何かと思えば、午前からヒステリーじみた声を張り上げる女社員が、時給を貰っている以上あなた方はしっかりやらなくてはならない、もしやる気ないように見受けられたらすぐに帰ってもらうし契約違反としてこっち側からは賃金を出さないという手段もある、などと言う。たかが時給850円なのでいっそ帰ろうかとも考える。
怒号が飛び交う中で午後の作業。作業自体は腰が多少痛くなるのとやたらほこりっぽく喉が痛くなるのに我慢すれば楽といえば楽だが、精神的に現場の間違いは許されないという緊張感が伝わってきて参る。途中、なにかチェックシートに数字を書かなかったやらなんやらで古参派遣社員の男に怒鳴られる。社員は兎も角、まさか半年くらい固定で働いてるだけの派遣社員に怒鳴られるとは思いもしなかったので、ついむかっ腹を立て謝罪はおろか返事さえしないでいると、「なんか言いたいことあんのか」と高圧的な態度で出るので、てめえなんか此処を一歩出ればただの三十過ぎの能無しフリーターのくせに何をそんな偉そうにしてんだバーカ、と先日読んだ西村賢太の小説にそのまま出てきたようなフレーズを言ってやろうかと思ったが、それは自分にもほとんど当てはまりそうで、事をややこしくするのも嫌なのでぐっと堪える。
午後六時終業。帰り際、誰も見ていないのを確認して事務所内に痰を吐く。どっと疲れ、帰りのバスで眠る。
夕食に野菜炒めと冷奴、トマトサラダ喰う。ギターの練習。