1月29日(水)

八時半起床。朝食に昨晩、妹が会社から貰ってきた栗入りのパイ、コーヒー、目玉焼き。兄が胃腸かどこか悪くして実家に帰って来ていた。
昼間、自室に籠り作業。
夕方、自転車で東陽町まで。七時から清川君と二人で区役所の音楽スタジオ入り。職員が先導してセッティングしてくれたが、開始早々にスピーカーから音が出ないトラブル。あれやこれやと三人で試すが、結局区役所の人間がスピーカーの電源入れ忘れていただけだった。自分が「PAは問題ないので、スピーカーの方はちゃんと入ってますか?」と何度も念を押したのに、いまの今まで相手方は大丈夫ですの一点張りだったのでさすがに殺意が沸く。二時間のうち三十分が無駄になった。
気を取り直していざ始めようかというときに、今度は自前のマイクが音を拾わない。持ってる楽器はクラシックギターとボンゴだから当然生音をマイクで拾う形になるのだが、これでは全く話にならない。マイクは区役所内にもあるにはあるが、こちらはボーカル用マイクで音を拾うには多少厳しい。接続が悪いのかとPAやシールドを色々いじるが、今度は耳をつんざくハウリング音。清川君もさすがに呆れたと見え、始めて触るドラムキットで色々遊び始める。
結局原因が判明しないままに時間だけが虚しく過ぎ、さすがに最後くらい何かしら合わせたいということで、ラスト五分清川君の刻むドラムのエイトビートに自分が即興で絶叫する、やぶれかぶれで痛々しいセッションで初めてのスタジオ練習は終了。練習らしい練習はなにもできなかった。さっきとは違う区役所の職員が入って来て、はやく撤収しろと叱責される。あとが入ってないし、最初の三十分はそっち側のミスだから多少は目をつぶってくれてもいいはずだと言い返したかったが、そんな力ももはやなく、黙って片付ける。スタジオをあとにする際、清川君が「俺たちにはこんなちょっとした愉しみさえも許されないのかよ」と呟いたのがひどく堪えた。
二人で中華屋に入り、塩バターラーメンと半炒飯を頼む。さすがに暗澹たる気持ちで、会話らしい会話はほとんどせず、店内のラジオを聞きながら黙って喰う。思えばこの中華屋は自分のお気に入りで、汚い店内だが、ここの醤油ベースの炒飯は自分が今まで食べたどんな炒飯より旨く、以前から是非清川君に食べてもらおうと余計な老婆心を抱き、それならスタジオ帰りにその日の練習を振り返ってああだこうだと言いながら食べたいと変に張り切り、先週からこの日を心待ちにしていたために、さっきの散々な結果をまたも思い返し、益々暗い気持ちになった。少しでも気を晴らしたくて日本酒を頼もうとするが、これは清川君に止められる。
「コーヒーでも飲みましょう」と店を出て駅前のベローチェに入り、一杯奢ってもらう。なにか今日のことを触れないようにか、大学時代の思い出やアイドルなんかの話を振ってくれ、少し気が晴れた。自分には本当にありがたく、この人のために少しでも頑張りたいと改めて思えた。十一時頃、別れて自転車で帰る。